歯根破折の原因や症状、抜歯しない方法を解説
私たちの歯は、頭の部分である歯冠(しかん)と根っこの部分である歯根(しこん)で構成されています。歯根は歯ぐきの中に埋まっているため、肉眼で確認することはできないのですが、ある意味で歯冠より重要な部分といえます。そんな歯根が折れる歯根破折は、治療が難しいことから、抜歯を余儀なくされるケースが多い点が怖いところです。今回はそんな歯根破折の原因や症状、歯根が破折していても抜歯しない方法などを詳しく解説します。
歯根破折とは
歯根破折とは、文字通り歯根が折れるもしくは割れる現象で、さまざまな原因によって引き起こされます。歯根が破折すると、そこから細菌が侵入して感染が生じたり、噛んだ時に強い痛みを伴ったりするため十分な注意が必要です。ちなみに、歯の破折は日本人が歯を失う原因第3位となっており、歯周病や虫歯に次ぐ深刻な歯のトラブルといえるのです。
歯根破折の主な原因
歯根破折は主に以下の3つの原因によって引き起こされます。
原因1.歯の神経を取って根管治療を行った
進行した虫歯では、歯の神経まで細菌に侵されていることから、抜髄(ばつずい)をした上で感染根管治療を行わなければなりません。そうした歯根の治療を行った歯は、歯髄による栄養素や酸素、免疫細胞の供給が止まることから、歯質が脆くなります。その結果として、歯根が折れやすくなるのです。
原因2.メタルポストを装着した
根管治療を行った後に金属製の土台であるメタルポストを装着すると、歯根破折のリスクが高まります。なぜならメタルポストは歯質よりも硬く、歯根に対してくさび状の力が働きやすいからです。とくにかみ合わせが高かったり、噛む力が強かったりすると、メタルポストによって歯根が割けてしまうため、装置の設計や調整は慎重に行う必要があります。
原因3.歯ぎしりや食いしばりの習慣がある
歯ぎしりや食いしばりをした時には、歯に対して60~100kgの力がかかると言われています。そのため歯ぎしりや食いしばりの習慣が長期に渡って続いている方には、歯根破折が起こりやすいです。極端に硬い食べ物を噛む習慣がある方も、同様の理由から歯根破折に注意が必要といえます。
歯根破折の主な症状
歯根破折が起きた歯には、次に挙げるような症状が認められます。
症状1.「バキッ」という音がする
歯根が折れた瞬間には、「バキッ」もしくは「パキッ」というわかりやすい音がします。極端に硬い食べものを強引に噛もうとした瞬間や歯ぎしりをした瞬間に注意しましょう。
症状2.被せ物やコアが外れる
根管治療の後に装着した被せ物(クラウン)やコアがすっぽりと外れた場合は、歯根破折している可能性が高いです。
症状3.歯ぐきが局所的に腫れている
歯の根っこの歯ぐきに局所的な腫れや膿の排出などが認められることがあります。これは歯根破折した部位で細菌感染が起こっているためです。
症状4.1本の歯だけグラグラ動く
1本だけ安定性が悪い歯があった場合は、歯根破折が疑われます。2~3本の歯が動揺している場合は、歯周病である可能性が高いです。
ちなみに、歯根破折では多くの症例で痛みが生じません。なぜなら歯根破折を起こす歯は、もうすでに神経が取り除かれているからです。そのため歯根破折は自覚しにくく、発見が遅れることも珍しくないのです。
抜歯を回避するには?
歯根破折が起こっても、抜歯しないで治療する方法はいくつか存在しています。
治療法1.再植術(さいしょくじゅつ)
再植術とは、歯根が割れた歯を口腔内から取り出した上で破折部位を修復し、再び元の位置へと戻す方法です。歯科医師が手元で破折部位などを確認しながら修復処置などを施せることから、本来は抜歯が必須となる症例でも抜かずに保存できます。ただし、再植術は極めて高度な治療法であるため、適切に行える歯科医師は一部に限られます。また、再植術を適応できる症例が限定的である点にも注意が必要です。
治療法2.エクストルージョン法
歯冠から歯根にかけて破折が認められる症例で、仮に歯根部の破折を修復できたとしても、歯冠部がボロボロでは歯を保存することは困難です。とくに歯ぐきから上の部分の歯質が不足していると、被せ物を装着することができず、抜歯せざるを得ません。そんな症例に有効なのがエクストルージョン法です。周りの歯を支えにして患歯を上方へと引っ張り上げることで、被せ物を装着する歯質が確保されます。こうしたある種の矯正治療を併用することで、破折した歯の抜歯を回避できる場合もあります。
まとめ
今回は、歯根破折の原因や症状、抜歯しないで歯を残す方法について解説しました。歯根破折は、神経を抜いた歯やメタルポストを装着した歯に起こりやすく、歯ぎしりや食いしばりをした瞬間に割れることが多いです。割れた時には「パキッ」というわかりやすい音が生じますので、心当たりのある方は早急に歯科を受診しましょう。歯根破折は、口腔内からの治療が難しいため、抜歯が第1選択となりやすいのですが、再植術やエクストルージョン法などを行えば保存できることもあります。いずれにしても放置するのは危険で、少しでも早く診断および治療を受けることが重要な状態といえます。
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