歯周組織再生療法と精密根管治療によって抜歯を回避した症例
歯周組織再生療法と精密根管治療によって抜歯を回避した症例
▼抜歯となる可能性が高い症状の歯を、歯周組織再生療法と精密根管治療によって保存した症例をご紹介します。
右下奥歯の疼痛を主訴に来院された患者様
レントゲン、CT、視診、触診、マイクロスコープ、歯髄診等の精密検査を実施致しました。
【検査の結果】
歯の中の細菌感染による、歯の尖端周囲の骨が溶ける【根尖性歯周炎】/赤色
根っこと根っこの股の部分の骨が溶ける【分岐部病変】/黄色
と診断しました。この2つが合併している場合、治る可能性が低い事から、一般的には抜歯を勧められることが多い症状と言えます。
勿論抜歯してインプラントでも良いと思いますが、残せる可能性がある歯ならば、できる限り残したいというのが私の気持ちです。しかし、必ずしも成功すると言う確証はありませんから、治療時間、治療回数、治療費がかかった上に、結果うまくいかなかったといった患者様には嬉しくない事が起こる可能性も充分に考えられます。そのため、利点欠点をともなった先入観のない、なるべく多くの選択肢の提示を行いました。
精密根管治療×歯周組織再生療法(エムドゲイン)で歯の保存に挑戦
患者様から、たとえ結果的に抜歯になったとしても構わないので、歯を残すことに挑戦してほしいという有難いお言葉を頂きました。よって、それぞれの症状に対して以下の2点の処置で症状の改善を試みることにしました。
歯の中の細菌感染による、歯の尖端周囲の骨が溶ける【根尖性歯周炎】に対しては、【精密根管治療】を実施。
根っこと根っこの股の部分の骨が溶ける【分岐部病変】に対しては、エムドゲイン【歯周組織再生療法】という骨様組織を造る外科処置で対応する事としました。
精密根管治療の実施
これ以上の細菌感染が無いよう感染防止の為、ラバーダム(青いシート)を歯に巻き、マイクロスコープを用いた拡大視野の下で精密根管治療を行いました。
精密根管治療の詳細は以下よりご確認下さい。
エムドゲインによる歯周再生療法
麻酔をした後に歯茎をめくり、骨の欠損部(黄色)を確認します。その後、マイクロスコープを用いた拡大視野の下で、丁寧に不良肉芽や歯石を取り除きます。綺麗になった患部にエムドゲインという特殊な薬剤を注入して歯茎を元に戻し、縫合しました。
エムドゲインとは?
歯の発生時に、歯周組織(セメント質・歯根膜・歯槽骨)を形成するタンパク質(エナメルマトリックスたんぱく質)を主成分とした薬剤です。
歯周組織が失われた患部に塗布することで、歯の発生時の環境を再現し、歯周組織の再生を促します。根っこ部分の分岐部病変による骨の欠損や垂直性の骨の欠損などの再生に有効な方法です。
歯周再生療法後の経過観察で症状の改善を確認して、治療の完了
歯根の分岐部病変が原因でできていたオデキが、術直後と術後10日ではまだ確認できますが、術後1か月では完全に消失しています。症状が改善された証です。
術後13年目の口腔内
▼術後13年目。かぶせ物がとれたためご来院されました。
初診時に【根尖性歯周炎】と【分岐部病変】によって骨が溶けていた歯根周囲も、13年後には歯槽硬線という一層の白いエックス線不透過像に囲まれ、骨様組織によって完全に修復されていることが確認できます。通常は抜歯である可能性の高い歯を保存することが出来ました。ここまで状態が改善されたこの歯を、抜歯する歯科医師はいないはずです。私のご提案を信じ、チャレンジにしていただいた患者様に感謝します。
歯のクリニック東京では、このように通常は抜歯となる症状であっても、保存出来る可能性が少しでもある場合には抜歯後の選択肢なども含め、ご提案させて頂きます。天然歯を出来るだけ残したいという方は、ぜひ一度当院にて診査・診断をお受け下さい。全ての症例において、絶対歯を残せるわけではありませんが、最善の方法をご提案致します。
治療期間 | 7ヶ月 |
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治療回数 | 5回 |
治療費 | 550,000円(税込) |
リスク・注意点 | ・再発する可能性がある。 ・治療経過によっては抜歯となる場合がある。 |